- 2005年07月20日
- 韓国の天然ガス事情(中)
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今週も先週に引続き、韓国エネルギー経済研究院、戦略企画研究団・団長の李 英九博士による寄稿論文を掲載致します。
2.天然ガスの位置づけ
LNG及び都市ガスの消費動向
韓国における1990年代のLNG消費量は、国内で通貨危機が発生した98年を除き、年率20-30% と高い増加率を見せ、2000年代に入ってからも発電用LNG消費の増減による変動はあるものの、同10% 程度の安定的な増加傾向を示している。
1990年代のLNG消費の高成長は、政府による天然ガス普及拡大政策、所得増大を背景とした利便性中心のエネルギー選択、 プロパンに比べて相対的に安い価格と安全性、環境規制の強化など、天然ガスの消費拡大に有利な経済的環境の進展に要因を見出すことができる。 一方、2000年以降は、首都圏地域における都市ガス普及率の鈍化や、長引く景気沈滞により同10%程度の増加に留まり、 特に03年は気温も作用して同4.3%という非常に低い増加率を示した。しかし、04年には一部の原子力/ 石油火力発電所設備の稼動停止と維持補修に伴い、発電用の代替燃料需要が急激に増加し、LNG消費は前年比17.7%の高い伸びとなった。
天然ガスの消費は、都市ガス用と発電用に大きく分かれ、1996年までは発電用が天然ガス消費量増大の主導的な役割を担っていたが、 97年以降は都市ガス用が発電用を超過するようになった。
都市ガス用消費は若干鈍化したとはいえ、依然として年率25%と高い増加率を示している。98年の通貨危機の際には、 増加率が前年比10.4%まで減少したこともあったが、99年には再び同26.5%に増加した。しかし、 このような高い消費増加率は2000年の同20.8%を最後に、首都圏における需要世帯数の増加低迷を受けて、01年に初めて同10% を下回って以降、02年に同8.7%、03年に同7.0%、04年に同5.2%と増加率の低下が続いている。
発電用LNG消費は、1990年に174万1,000トンを記録して以来、97年まで持続的に増加していたものの、 電力需要が初めてマイナス成長となった98年には、前年比22.9%減の418万9,000トンへと大幅に減少した。 夏場の低気温と不景気の余波で、2003年にも同0.9%減となり、横這い状態である。発電用のLNG需要は、 他の発電用燃料の需給状況に従って変動する様相を見せている。特に、 04年に一部の原子力及び石油発電設備の稼動停止と維持補修を受けて代替燃料の需要が高まり、発電用LNG消費は同37.5% という高い増加率を示した。
国内天然ガス・パイプライン網の敷設がある程度完了したことで、都市ガスを利用する消費者が増加している反面、 高い増加傾向を見せていた首都圏地域における普及率は飽和状態となり、増加速度が落ちている。04年末現在、 首都圏にて合計7社の都市ガス会社が需要家約730万戸を対象に供給事業を行う一方で、 地方では合計26社の都市ガス会社が約370万戸の需要家に供給を行っている。
1990年に120万戸を記録した都市ガス需要家数は、利便性、環境規制、 首都圏新都市開発に伴う大規模な住宅団地建設及び都市ガス配管網の拡充等により、94年までに年率平均25%以上の高い増加率を示した。 以後、地方の需要家数は増加したが、首都圏の普及率が飽和状態に陥ったことから全体の増加率は伸び悩み、 2000年以降は1桁台に留まっている。
天然ガス産業の構造
韓国の天然ガス産業は、卸売事業と小売専門の一般都市ガス事業に大きく分けられる。今日まで、 天然ガスの輸入及び卸売事業は、韓国ガス公社(KOGAS)が独占的に運営してきた。一方、一般都市ガス事業は事業の特性上、 公益性が高く自然独占的な性質が濃い事業にもかかわらず、民間事業者が地域別に独占している。
現在、首都圏地域にて7社、釜山を含む地方で26社と、全国で合計33社の都市ガス会社が小売り事業を運営している。
天然ガス産業は、法律によって卸・小売事業者間の事業領域が明確に区分されている。都市ガス事業法(都法)第2条第3項では、 「ガス卸売事業は一般都市ガス事業者以外の者」と規定しているため、一般都市ガス事業者によるガス卸売事業は認められていない。また、 同法施行規則第2条第2項において、産業資源部(MOCIE)長官が認定する大規模需要者(韓国電力公社(KEPCO)の発電子会社) 以外は、小売事業を行えないよう制限している。天然ガスの輸入及び販売、卸売、小売、自社用の直接輸入、ガス供給設備の設置などを行うガス事業者は概ね、 法に定められた規制者の許可を受ける必要がある。天然ガスの輸入は、 都法第18条第4項によってMOCIE長官の承認を受けなければならないが、 自社用にLNGを直接輸入するなど都市ガス事業以外の用途であれば、石油事業法第8条に基づき、MOCIE長官への申告のみで可能となる。 また、卸売ガス事業は都法第3条第1項によってMOCIE長官の許可を、 一般都市ガス事業は都法第3条第2項によって市道知事の許可を要する。
自社内での利用を目的とした直接輸入は、2001年に承認制から申告制に改正され、 石油事業法施行令第11条第1項で定められた容量10万キロリットルのLNG貯蔵設備の設置が義務付けられている。 ガス供給設備の設置事業は、都法第39条第2項に従い、MOCIE長官の承認取得或いは同長官へ申告するようになっている。 国内ガス産業の構造と流通体系は下図の通りである。
都市ガス小売事業の独占権は、都法施行規則第5条(都市ガス事業許可の細部基準)の内、「都市ガスを供給しようとする圏域が、 他の都市ガス事業者の供給圏域と重複しない事」という規定によって地域別独占が認められている。これは、 最初に認可された事業者が事業権を維持出来るよう定めたもの。各都市ガス会社の供給圏域は、複数の市・郡で構成され得るものの、原則的に市・ 郡の単位(ソウルの場合は区単位)で指定され、1社につき1規制圏域が一般的である。但し、首都圏の場合は、 例外的に1社の供給圏域が複数の区や市によって構成されることもある。都法第3条第5項において、市道知事は地域特性に適合するよう一般都市ガス事業の許可の基準を定め、 都市ガス供給圏域を設定して告示するとしており、状況に応じてMOCIE長官と協議するように規定している。 こうした手続きを通じて設定された供給圏域であっても、同長官或いは市道知事が、ガス需給の円滑化や共益性のため必要と認める際には、 都法第40条第2項に規定される供給圏域調整命令権に従い、ガス供給圏域の調整、事業の統・廃合が可能となる。
政府は、これまで独占事業として運営されてきた天然ガス産業に競争原理を導入するため、産業構造改編計画を推進してきたが、 数多くの事情によって進行が滞っている。現在、過去に推進したKOGASの輸入販売権を分割する基本計画を撤回し、 新規参入方式を通じた競争原理の導入を計画している。2004年8月-05年2月16日に実施された優先供給者の選定入札も、 今後推進される同方式を念頭に置いた措置であった。結論として、 韓国の天然ガス産業構造は独占体制から競争体制に転換される方向に向かっている。
LNGの輸入と供給
韓国のLNG輸入量は、1986年10月にインドネシアより輸入を開始して以降、毎年著しく増大しており、 2004年には合計2,209万5,000トンに達した。現在KOGASは、インドネシア/マレーシア/ブルネイ/カタール/オマーン/ 豪州等との長・中・短期契約を通じて輸入すると共に、一時的に発生し得る需給の不均衡を解消するためアラブ首長国連邦(UAE)/ アルジェリア/ナイジェリアなどの生産国との間で現物取引を行うほか、日本/台湾/ スペイン等からも現物取引及びスワップを通じてLNGを購入している。
韓国のLNG売買契約(SPA)は04年末現在、下表の通り形態が多様化している。KOGASは、 長期契約による5ヵ国7プロジェクトからの合計1,698万トン/年に加え、中期契約でマレーシア/豪州より合計250万トン/年を購入し、 更に、カタール・ラスラファンLNG(ラスガス)/マレーシアLNG第3プロジェクト(ティガ:MLNGⅢ)との間で、05- 08年までの短期LNG購入契約を締結している。鉄鋼大手の浦項総合製鉄(POSCO)は、LNGの直接輸入を推進しており、 5月27日には、全羅南道の光陽に新設したLNG受入基地にてオマーン産LNG約6万トンを積載した初カーゴを受け入れた。
民間発電事業者のKパワーは、04年8月31日にインドネシア・タングーとの間で、06年以降20年間に亘りLNG60万トン/ 年を購入するSPAを締結した。長期契約に基づきLNGを購入しなければならないというLNG取引の原則が、 大きく変化していることを実感させられる。3.競争入札(Tender)
競争入札の推進日程
KOGASは、04年8月20日に入札案内書(ITB)を発行し、応札書類の提出期限を9月20日とした。 10月8日に応札者の中からITBの条件を満たし競争力があるとして一次審査を通過した優先交渉権者に対して、 意思確認書(HOA)協議案を05年1月10日までに政府に提出するよう要求した。HOA協議案の提出を受けた政府は、 所定の手続きを踏まえた上で二次審査を実施、2月に優先供給者を選定した。KOGASは、政府が選定した優先供給者との間で3- 5月中にSPA条件に関する交渉を行っており、最終的にSPAを締結する。
ITBの主要内容
ITBは、韓国のLNG需給計画の下、08年より追加購入するLNG約500万トン/ 年を競争入札方式で実施するに当たり発行された。同入札方式は、比較的最近になって中国で始められたものであり、 過去に双方協議による購買方式から生じた不透明性を解消すると同時に、競争力のある条件で購入できるという長所を有する。
ITBの内容は、08年より合計で最小450万トン/年のLNG購入に関して、2件以上のSPAを締結し、 買主のオプションによって最大600万トン/年まで増量が可能というもの。政府は、 ITBを通じて選定した最低2社以上の優先交渉者の中から、優先供給者を2社以上選びHOA協議案を完成させ、 最終的にSPAを締結するよう推進した。これに伴い、同一応札者と3件以上のSPAを締結しないよう制限している。
政府がKOGASを通じて発行したITBには、応札者がHOA協議案を提出する際の主要前提条件が明示されている。これは、 150万トン/年(50万トン/年のオプション付き)で構成される3件の契約に関する入札であり、2件の契約を合わせた300万トン/ 年で応札できるようにしている。契約期間は08年1月から20年間で、5年間の延長オプション付き。
上記以外にも、ITBには、減量権など取引条件と契約価格に対する基本原則が提示されている。契約価格の公式は、 一般価格公式と共に一次方程式に従うが、勾配(1次項の係数)は0.05に予め設定されている。応札者は、与えられた価格公式に基づき、 冬夏の引き取り割合(70:30と50:50の2つに限定)及び受渡条件(Ex-shipまたはFOB)によって、 4つの常数項のみを提出する。価格公式に適用される指標油価は、日本の輸入原油平均価格(JCC)とした。 油価の騰落に伴うLNGの価格変動を緩和するため、価格公式にJCCの上・下限を設定、価格の範囲は$15<=JCC<=$25とされた。 また、価格再交渉条項も含めるように要求されている。
その他の事項として、本SPAは、政府が現在推進中の構造改編時、 特定時点にKOGASを除く韓国の他法人に譲渡され得るものであり、これに関しては契約交渉段階で追加論議する予定になっている。
優先供給者の選定
政府は04年7月以前にも、08年から追加購入するLNG500万トン/年につき、 新規輸入販売事業者とKOGASとの間に競争を生じさせることで、国内ガス産業における競争原理の導入を計画したが、 こうした計画は様々な理由で長い間遅延していた。一方で政府は、08年より購入するLNGの購入交渉期限が迫っていたことから、 先ずKOGASにSPAを推進させるしかなかった。ただ、今般のSPAはKOGASが締結するものの、 政府の政策変更に伴い輸入販売における競争体制が確立された場合、新規事業者に譲渡し得ることが明記されている。
KEPCOの子会社らは、KOGASが上記主旨を盛り込んだITBを発行し、HOA協議案を策定している間に、 自社用のLNGを直接輸入する意思を政府に提示した。これに対して政府は、法的権限のLNG需給調整命令権を発動させ、 当時推進中にあった競争入札に参加することを指示した。
KOGASとKEPCOの子会社は05年1月10日、LNG協議案を政府に提出した。政府は、 LNG協議案の内容を公正且つ透明に評価するため、エネルギー経済研究院に評価基準の作成を要請し、 評価基準審議委員会を開催して評価基準を確定した。政府は15日、客観性・公正性・専門性を確保するため、エネルギー専門家/ 国際法律専門家/消費者団体代表など、外部人事で構成された評価委員会を構成した上で、同協議案の形式及び内容を一次審査した。その結果、 多数の協議内容において、事業者が作成した公式書面内容の欠点など形式上の不備を指摘し、追加補完を要請した。 31日に補完済の協議内容を審議し、2月3日に最終評価を実施、露サハリンⅡプロジェクト、MLNGⅢ、イエメンLNG(YLNG) の3社を選定した。
評価基準の概要
今般の競争入札に提出された協議案の評価基準は、大きく4つの項目に分けられる。最も重要な項目は輸入価格の経済性で、 次に供給の柔軟性、安定性、そして国民経済的な観点からの戦略的価値である。
輸入価格の経済性評価を行うには、LNGの輸入価格、価格再交渉、品質、代金支払条件などの検討が必要であり、 各要素に対する重要度を決めなければならない。供給の柔軟性評価においては、輸入パターン、減量権、 買主オプション数量の有無と補償条件等を含む契約数量の調節権、再販売制限の是非、仕向地条項の有無、テイク・オア・ ペイ適用数量及び適用条件などが検討された。供給の安定性は、短期と長期に区分され、短期供給の安定性には、 立ち上げ期間における調達数量計画の信頼性、緊急時の追加輸送能力を示す輸送距離、供給数量不足に対する補償が評価された。 長期供給の安定性は、天災地変等の不可抗力による事態が発生した際の、補充計画及び補償規定、輸入先の変化への影響等が評価された。 最後の戦略的価値は、ガス井やLNGプラント事業への参画可能性の是非、韓国との経済協力状態と将来的な協力可能性を通して評価された。
競争入札の結果
競争入札の評価結果は2月16日、MOCIE長官からLNG輸入契約の推進経緯に関する発表に続いて、 評価委員長が発表したと報道された。各優先供給者の協議案で提案された基本数量は、サハリンⅡとMLNGⅢが各150万トン/年、 YLNGが130万トン/年と、合計430万トン/年であり、各々の買主オプション数量を含めた合計は600万トン/年であった。
今般の競争入札における特徴は、韓国がLNG輸入を開始して以来初となる、 KOGASと発電会社の競争方式による輸入契約を推進したという点である。競争入札の効果は主に以下5点に要約できる。
◆ 第一に、輸入価格が、既存の中長期LNG契約と比較して約35-40%以上低い水準で締結され、今後20年間で約134億ドル (約1兆5,000億円)の輸入費用が節減される。
◆ 第二に、輸入パターンを冬期に集中させる条件を確保することで、LNG貯蔵需要を大きく削減した。
◆ 第三に、価格上下限など、油価に対する緩衝策が用意され、高油価への積極的な対応を可能とした。
◆ 第四に、大規模資源保有国であるロシアとのエネルギー協力を堅固にする基礎を固めた。
◆ 第五に、韓国企業が、ガス田開発に参加したイエメンのガスを輸入することにより、海外資源の自主開発能力が向上した。
参考までに、既存契約と新規契約の比較は下表の通りである。(安)
(李 英九博士)

