- 2005年08月03日
- 韓国の天然ガス事情(下)
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今週は、韓国エネルギー経済研究院、戦略企画研究団・団長の李 英九博士による寄稿論文の最終回を掲載致します。
4.天然ガスの展望
LNG需要の展望
LNG需要の展望には、 エネルギー経済研究院でまとめた中期需要展望と政府が策定した第7次長期天然ガス需給計画がある。ここでは中期需要展望について詳述し、 第7次長期需給計画については概要と結論のみを記したい。
予測は、都市ガス用需要と発電用需要に分類して行う。都市ガス用需要は、先ず最終消費部門について予測した後、これを家庭用、 業務用、産業用などの用途別に分類し、価格、所得、 冷暖房利用などの気温変数と需要世帯数を供給面の変数として利用して用途別需要を推計する。次に、都市ガスの原料であるLNG/ 液化石油ガス(LPG)の投入比率及び自家消費、損失率などを勘案して都市ガス製造用のLNG需要を予測する。発電用のLNG需要は、 エネルギー源別発電量及びエネルギー投入量を推計する最適電源構成モデル(LPモデル)を用いて算出する。
需要展望によれば、LNG需要は今後年率10%以下で安定的に成長すると見込まれるが、その増加率は変動幅が大きいと予想される。 こうした大幅な変動は、ピークロード用発電のためのLNG需要変動に拠るところが大きいと思われる。都市ガス用需要は年率5-6% の安定的増加傾向を維持する一方、発電用需要は増減を繰り返しながらも漸進的な減少傾向を継続すると見込まれる。
都市ガス需要の展望(エネルギー経済研究院)家庭用都市ガス需要は、2005年に7.8%の成長率を示した後、需要家数の増加鈍化によって09年まで5-6% レベルの緩やかな増加が見込まれる。業務用需要は04年に15.2%という比較的高率の成長を遂げたが、05年以降増加率が鈍化し、 09年には3%台の低い増加率になると予想される。産業用需要も、05年には7.9%の高成長を見せるものの増加率はその後低迷し、 09年には前年比4.1%増の54億3,000万立方メートル/年(LNG換算約380万トン/年)に留まると見込まれる。
第7次長期天然ガス需給計画04年末に政府が策定した第7次長期天然ガス需給計画(04-17年)によると、 天然ガスの総需要は03年の1,844万7,000トンから17年の3,165万7,000トンへと、年平均3.93% 増加する見通しである。このうち都市ガス需要は、 03年の1,197万9,000トンから17年には2,489万3,000トンへ年平均5.36%増加し、 一方で03年に646万8,000トンであった発電用需要は、 その後増減を繰り返し17年に676万4,000トン程度に留まる見込みである。
これは、ベースロード用の発電を行う原子力/有煙炭発電所の竣工により、LNG発電の予備率が高くなることと密接な関係にある。 従って、原子力/有煙炭発電所の建設計画が予定通り推進されない場合には、発電用LNG需要は増加する可能性が高い。下表は、 第6次計画と第7次計画の需要展望の比較である。
用途別では、都市ガス用は展望期間中に年平均5.36%増加し、17年には2,489万3,000トンに至るものの、 増加率は次第に鈍化する見通しである。中でも家庭用需要の増加率は、 全国主要都市で配管網の構築事業がほぼ完了することに伴って次第に低迷し、年平均3.97%程度の増加となる見込みである。業務用需要は、 小型コージェネレーション(熱電併給)の普及拡大などにより、家庭用需要より高い年平均6.44%の増加率が見込まれる。産業用需要は、 天然ガスの価格競争力が向上し、環境問題などにより需要拡大に向けた努力が持続的に推進されれば、年平均6.93% 増と比較的高い伸びを示すと考えられる。
発電用都市ガス需要は、03年の646万8,000トンから17年には676万4,000トンとなる見通しである。 電気事業用需要の変動によって、自家用及び小規模集団エネルギー (CES) 事業の需要が一定レベルで推移、 或いは増加するにもかかわらず、増減を繰り返すと見込まれている。電気事業用需要は、発電所の建設計画及び電力予備率の変動が予想され、 経済的な給電方式の燃料消費によって急激な低下が見込まれる一方、浦項総合製鉄(POSCO)、仁川(インチョン) 空港の自社発電需要には大幅な変動はない見通しである。CES事業用LNG需要は、松都(ソンド)、華城(ファソン)、坡州(パジュ)、 板橋(パンギョ)、釜山の鼎冠(ジョングァン)における新規CESでの消費を反映し、 07年の4万6,000トンから10年に59万9,000トン、15年に75万3,000トンへと増加する見込み。
以上の需要展望をまとめると、展望期間中の天然ガス需要は、産業用とコージェネレーションを含む業務用需要の増大が主導し、 発電用需要の増加率は、ベースロード用発電所の建設計画が予定通り推進されれば非常に低くなる見通しである。従って、 今後は自社消費用LNGの直接輸入は産業用を中心に増加する可能性が高い。
5.民間企業によるLNG輸入とガス公社の民営化自社消費用LNGの直接輸入の進捗状況
民間企業が自社消費用にLNGを直接輸入する最大の理由は、価格競争力の優位性である。 技術開発によりLNG生産コストや輸送船建造コストが低下するなど、海外LNG市場を取り巻く環境は大きく変化し、 新規LNGプロジェクトから供給されるLNGの価格は下落傾向が続いている。そのため、新規にLNGを輸入して消費する事業者は、 韓国ガス公社(KOGAS)が供給する天然ガスを消費する事業者に比べ、価格面で高い経済性を確保することが可能となった。
こうした状況を踏まえ、法律で定められた資格要件を備えるLNGの大規模需要家は、 可能な限り早期に自社消費用LNGの輸入を実現すべく取り組んでいるか、或いは現在その構想を練っている。 大規模需要家による自社消費のための直接輸入は申告制となっており、 石油事業法施行令第11条第1項に定められた登録要件である容量10万キロリットル以上のLNG貯蔵施設さえ設置すれば、 誰でも行えるよう自由化された。しかし、直接輸入が過度に推進された場合、 KOGASが既に長期契約を締結しているLNGに余剰が出かねないため、政府が需給調整命令権を行使する。つまり、自社消費向けといっても、 その需要が既に政府の長期天然ガス需給計画に組み入れられている場合には、直接輸入は許可されないのである。
現在LNGの直接輸入事業を実施、或いは政府に申告して必要な要件を準備している事業者の状況は、下表の通りである。
去る5月27日に、6万トンのLNGを積載してオーマンのカルハットを出航したLNG船が、POSCOの光陽(グァンヤン) 受入基地に初入港した。光陽基地は、容量10万キロリットル級のLNG貯蔵タンク2基と、 16万5,000立方メートル級のLNG船が着岸できる港湾施設を備え、年間最大170万トンのLNGを処理できる。 POSCOは同基地の竣工後、115万トン/年のLNGを処理して、光陽と浦項(ポハン)の自社発電所に55万トン/年を、 またSKコープの子会社であるKパワーが計画中の発電所に60万トン/年を供給する計画である。Kパワーは06年より60万トン/ 年を輸入する売買契約(SPA)を締結しており、またGSカルテックス(旧LGカルテックス精油)は仮認可を受けたが、 まだ具体的な輸入量を確定していない。その他にも、大林産業や複数の発電会社が、直接輸入事業への参入準備を急ピッチで進めている。KOGASの民営化
KOGASの民営化計画は、当面は進展しない見通しである。現政権に移行してから、 ネットワーク産業の民営化は慎重に検討する必要があるとの大統領発言があり、 KOGASの民営化は現政権下では事実上議論されないと思われる。産業資源部(MOCIE)は03年3月の大統領業務報告の中で、 設備部門は公社体制を維持する一方で、輸入卸売部門については競争を促すため分割方式と新規参入の導入を検討しており、 充分な論議を重ねた上で決定したいと述べた。本件について大統領は、 エネルギー産業の構造改編及び民営化は海外の事例等を深く研究して推進し、 また労働組合など利害関係者との間の信頼確保と認識共有が極めて重要であるため、十分な説明及び協議過程を経るよう指示した。
KOGASの事業領域は、パイプライン網の運営・管理などの設備事業と、LNGを輸入し卸売を行う輸入販売事業で構成される。 政府は現在、輸入販売事業に競争を導入する計画を推進しており、競争導入を視野に入れた設備の共同利用制度を準備中である。 ガス産業に市場競争を導入して公正な競争体制を構築するためには、外国における事例を参考にすると、 KOGASの設備部門と商品部門の分離が避けられないと考えられる。
大統領の指示事項はネットワーク産業の公社維持を意味するもので、 競争が可能な輸入販売事業についても公社形態を維持しなければならないという意味ではないようである。 KOGASを公社として維持する方針が確定すれば、 政府は現在のところ民営化促進法によって出資会社になっているKOGASの法的地位を投資会社に戻し、規制を合理化する必要があるだろう。
韓国が資本主義市場経済を国家経済運営の根幹に据え、またガス輸入卸売事業への参入障壁を低くして競争促進を図ろうとするなら、 KOGASの輸入販売部門の民営化は最低限行われるべきである。原則として公社は、 政府が公社を設立して保有しなければならない理由が消滅した場合には、民間に売却されるのが合理的である。 競争原理が導入され設備の共同利用制度が実施された後もKOGASを公社として維持するなら、政府企業が民間企業と競争する形態になり、 公正な競争の確保は容易でないだろう。これは、先進国で公社の民営化を実施する理由と同様である。公正な競争が行われれば、 公社が民間企業との競争で生き残ることは難しいと考えられる。
結論として、政府にガス産業の構造を競争体制に転換させる意思があるのであれば、 優先的にKOGASの輸入販売部門を分離すべきである。初期の段階ではまず会計分離を実施し、続いてKOGASを子会社に分離し、 最終的には民間企業に譲渡しなければならない。但し、自然独占的な性質が色濃く、公益性が残る設備事業部門は当面公社形態を維持し、 将来的に民営化することが、韓国ガス産業の発展にとって望ましい方策であると考えられる。(川)
(李 英九博士)
