- 2005年11月23日
- 変化するグローバルLNGビジネス、日本市場への影響(中)
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今週も先週に引き続き、第13回ダイアモンド・ガス・セミナーでの、アンディ・ フラワー氏による講演の内容をご紹介いたします。
LNG輸送
過去4年の間に、世界のLNG船隻数は大幅に増加しました。54隻が新たに操業を開始し、2005年9月現在、182隻が稼動中です。 2001年以前のLNG船は平均積載量が11万1,800立方メートルだったのに対し、 新規LNG船の平均積載量は13万8,600立方メートルです。結果として、新造船は世界のLNG船の総積載量を54%増加させました。世界の液化能力は同期間に約35%増大しましたが、輸送能力がそれよりも急速に増大したことで、傭船価格が15万ドル (約1,800万円)/日とピークであった2001年の逼迫した輸送状況は、余剰が増加しつつあるところまで変化しました。2005年には、 10隻を超えるLNG船が待機中という時期もありました。この影響を受け、短期傭船価格は、船主が資本・ 操業コストを賄うのに必要な金額の半分にも満たない3万ドル(約360万円)/日を下回りました。船が使用可能な状態にあること、 及び輸送コストが低減したことで、輸送が逼迫していた時には余程のことがない限り検討され得なかったLNGの長距離輸送が、売主/買主/ トレーダーにとって容易なものになりました。
LNG船が現在余剰気味であっても、企業が新造船の発注を思いとどまることはなかったようです。 9月には発注済みの船数が125隻に達しており、それらの平均積載量は15万6,000立方メートルです。<グラフ1>では、 新造船の引渡し時期を年毎に示しています。世界のLNG船の総積載量は、2010年までに2倍以上になります。発注済みの船の中には、英国・ 米国へのLNG輸送用にカタールが発注した20万9,000-21万7,000立方メートル級の20隻も含まれています。 これら大型船を利用することでカタールのプロジェクトは、規模の経済を生かし、0.15-0.30ドル/ 百万Btuと推定される輸送コスト削減を実現する見通しです。
LNG基地
建設段階にあるLNG基地の合計受入能力が9,250万トン/年で、更に計2億2,600万トン/年が計画段階にある現状を考えれば、 LNGが買い手市場から売り手市場に推移するという話は意外に思われるかもしれません。しかし私は、それが現実であり、 下流市場における活動に注力しなくてはならない理由を知ることでもあると確信しています。 天然ガス供給源の多様化は安定供給にとって重要であるという考えは広く普及しており、LNG輸入を計画している国の数は急速に増えています。 その上、潜在的な大規模輸入国として英国/米国/インド/中国が浮上しつつあります。各国政府は、新規設備の承認を迅速化し、オープン・アクセスで操業するのかクローズド・ アクセスで操業するのかといった判断に柔軟性を示すなど、輸入能力の増大をサポートしています。例えば英国政府は、 天然ガスのインフラはオープン・アクセスで操業されるべきであるという基本方針を打ち出しています。 しかし現在操業中或いは建設中の基地は全て、そのような操業でも競争に害を及ぼすことはないとして、オープン・ アクセス規定の適用を免除されています。ただし政府は、 企業が国益に反していると判明した場合には免除の決定を再検討する権利を有していますし、自社で使わない能力まで独占することがないよう 「空押さえの禁止」条項を課しています。
米国で最初に建てられた4基地のうち3基地はオープン・アクセスで操業していますが、連邦エネルギー規制委員会(FERC) は2003年、新規基地に関し、生産施設と同様に開発を行う企業が能力を自社使用のために確保することを認めました。FERCは、 競争が制限されていることが明らかになれば、この処置を再検討することができます。自社で使用する能力の確保を認めたことは、 新規基地計画が急増した理由の一つです。
<表1>では、世界中で操業/建設/計画中の基地数をリスト化しました。操業中の基地が51ヵ所、建設中の基地が18ヵ所あります。 更に80ヵ所を超える基地が計画されており、その約半数が北米に位置しています。ここには各基地の能力は示していませんが、 平均的な能力を400万トン/年と仮定すると、受入能力の合計は6億トン/年を上回り、 見込まれている液化能力を大幅に超えることになります。
<地図1>では、計画段階にある米国の新規施設の大半がメキシコ湾岸に集中していることが分かります。この地域の受入基地は、 パイプライン網へのアクセスを擁し、地元住民の許可を得やすく、様々な発熱量のLNGを受け入れることができます。 主要な消費エリアに近い東海岸/西海岸の基地で取り扱えるLNGは、 一部の生産者からしか受け取ることができない低発熱量のLNGに限られています。
<地図2>に示されるように、欧州で操業中の基地の大部分は、 1990年代まで主要供給源だったアルジェリア及びリビアに近い南部に位置しています。欧州南部の市場はまた、北海/オランダ/ ロシアからの基幹パイプラインによる輸入ルートから遠く離れています。新規基地の多くは、 国内生産の減少を補うべく欧州北部に位置しています。
欧州と米国における輸入能力の拡大は、両地域の買主に、より遠く離れた供給源の開拓を余儀なくさせています。欧州は、 中期及び長期契約による中東産LNGの購入量を増やしています。米国もまた供給源としての中東に目を向け始めていますし、 北米西海岸の基地が操業を開始すれば、環太平洋地域の生産地へのアクセスも可能になります。このことは、 アジアの買主にとって大変な競争の脅威となりうることを意味します。では需要はどうなるのでしょうか。計画中の基地の能力を考えれば、買主の期待が供給の潜在力を大幅に上回るという、 どうしようもない状況です。価格は、供給可能なLNGが市場間でどのように分配されるかを決める要因の一つです。 数年前は可能だったような取引が今では不可能になっているため、インドや中国など新規市場の一部は競争に負ける可能性もあるでしょう。 例えば中国は、2010年までに3,000万トン/年という十分な能力の基地を計画しており、 2015年にはその倍の能力を擁しているかもしれません。しかし目下のところ中国は、 僅か600万トン程度の供給契約を確保したに過ぎません。
<グラフ2>には、私が考える2004-2020年のLNG需要を示しました。 詳細な予測モデルを展開するための情報源は持ち合わせていませんので、数字の扱いには多少の注意が必要です。予測を地域毎に分けましたが、 アジアについては、日本/韓国/台湾の既存市場における需要と、インド/中国といった新規市場の需要を区別しました。 2010年と2015年には、需要予測を導き出した方法から需給のバランスが取れています。しかし、 このまま同じ比率で2015年以降も需要の成長が続くようであれば、現在まだ計画されていない更なるLNG供給能力が、 2020年までに必要となるでしょう。
LNG価格
過去3年間、原油価格は一見止めようのない上昇傾向にあり、原油価格に直接リンクしているためか、 或いは競争が激化する世界において石油とガスの大幅な価格差は長続きしないためか、天然ガス価格も上昇しました。 LNG価格も世界的な動向を受け、変化率は異なるものの全ての市場において上昇しました。更に、 各地域における価格の相対的水準には根本的な変化が起こりました。過去25年間の大半において、アジアのLNG価格は最も高く、欧州価格がそれに続き、米国価格は最安値でした。このことは、 1980年から1990年代後半にかけて大西洋地域で新たなプロジェクトが開発されなかったことと共に、 LNGがアジアにおいて最も早く成長した原因の一端です。
1990年代には、日本に供給されるLNGの殆どに用いられる価格フォーミュラに、所謂「S」カーブが導入されました。 <グラフ3>が示すように、Sカーブには、原油価格が高騰或いは下落した際その影響を抑制する効果があります。 取り決めが協議された時点では、20ドル/バーレルが平均原油価格と見られ、24ドル/バーレル以上、或いは16ドル/ バーレル以下になると、LNG価格と原油価格の関連性が低下し始めるように考えられていました。数多くの契約において、原油価格が29ドル/ バーレル以上(或いは11ドル/バーレル以下)になった場合、当事者は価格協議の場を設けることで合意しています。 なぜなら価格がこのレベルに達するのは、非常事態にのみ生じる極端な状況と見られていたからです。日本向け原油平均価格(JCC)は、 2002年5月以来24ドルを下回ることはなく、2003年11月以降は29ドル以上で推移しています。契約当事者たちが29ドル/ バーレル以上で推移する価格に対する解決策を見出せないでいるため多くの価格は暫定的であるものの、Sカーブには、 <グラフ4>に示されるような意図された効果があります。2005年8月、JCCが9.50ドル/百万Btu以上に相当する55.50ドル/ バーレルだったのに対し、日本のLNG価格は平均6.24ドル/百万Btuでした。韓国/ 台湾の契約にはSカーブによる原油価格高騰対策が盛り込まれていないため、両国は日本より約10%高い価格でLNGを購入しています。
<グラフ5>には、1996年から2005年に亙る米国/スペイン/日本のガス価格の展開を示しています。米国価格は、 LNG価格の基準を規定する月毎のヘンリーハブ価格です。スペインについては、LNG価格を含む平均的な国境渡し価格を示しました。 グラフから分かるように、1996年から2002年の殆どの時期において日本価格が最高値でした。しかし2002年以降、 日本価格は概ね米国価格を下回っていますし、過去12ヵ月においては、日米両国の価格がスペイン価格よりも低くなっています。
現在LNGをアジアの既存市場に供給している契約の殆どは、2000年以前に交渉されたものです。 最近の価格再交渉で価格が下げられたケースもありますが、それでも2000年以降に締結されたアジアの契約の一部に比べれば高値です。新規の買主はLNGの初購入に当たり、2000年代前半の買い手市場に乗じて低価格を確保しています。新規の買主には、中国の広東/ 福建プロジェクトや、韓国の浦項総合製鉄(POSCO)/Kパワーなどが挙げられます。韓国ガス公社(KOGAS)は先頃、マレーシア・ ティガ(MLNGⅢ)/イエメン/サハリンⅡとの契約に際し、同様の低価格を確保しました。
最近の契約では、2000年以前の契約に比べ原油価格との関連性は大幅に低下しています。更に、その多くには約25ドル/ バーレルの最高価格が盛り込まれており、現在の原油価格の展望を考えれば当分の間実現するとは思えない15ドル/ バーレルの最低価格も併せて記載されるのが通例です。あるプロジェクトは、原油価格とのリンクを完全に断ち切りました。 2004年1月に開始されたカタールのラスラファンLNGⅡ(ラスガスⅡ)プロジェクトからインド・ペトロネットLNG(PLL) のダヘジ基地へのLNG供給は、最初の5年間、固定価格にて行われます。<グラフ6>が示すように、これは現在、 他国を大きく引き離し世界一安価のLNGです。
原油高騰の影響を遮る低価格の達成は、LNGの買主及びその顧客にとって明らかに喜ばしい展開です。中国やインドなど、 天然ガスの利用を促進しており将来LNG需要の増大が見込まれる新規市場にとっては重要なことです。 しかしこのような新価格がアジアのLNG動向を決めることになれば、 アジアはLNG生産者にとって魅力的な市場ではなくなる可能性が出てきます。原油価格が現状のレベルを維持するようなら尚更です。その結果、 1980年代から1990年代初頭にかけて新たな供給プロジェクトが開発されなかった大西洋地域のLNG事情が、 今後10年の間にアジアで再現されることになるのでしょうか。(安)
(アンディ・フラワー 11月2日)
