- 2007年01月17日
- 中国のエネルギーの現状とその発展課題(下)
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今週は、中国国家発展改革委員会(NDRC)エネルギー研究所エネルギー経済発展戦略研究センター(ERI) 主任研究員の高 世憲(Gao Shixian)氏による寄稿論文「中国のエネルギーの現状とその発展課題」の最終回をお届けします。
4. 中国のエネルギー戦略
エネルギー問題は中国が全面的な現代化を実現し、世界の先進国水準に到達する過程での長期的な制約要因である。このため、 エネルギー問題については、全体の中での長期的視野に立った検討が行われる必要がある。
中国のエネルギーの中/長期的発展戦略の起点は、省エネ優先、供給安全、構造改善、環境配慮に置かれるべきである。4.1省エネの優先
短期的に見ると、 2006年3月に承認された国民経済と社会発展の“第11次5ヵ年”計画の中で、“2010年に国民一人当たりの国内総生産(GDP) を2000年の倍”にし、“GDP単位当たりのエネルギー消費量を、第10次5ヵ年計画比20%前後低下させる” 目標が明確に打ち出されている。長期的に見ると中国経済は、一定の成長速度を長期間持続し経済規模が更に拡大し、 工業化が引き続き推進されていく。市民の消費構造は徐々に高度化し、都市化の歩みが速まり、 市民のエネルギー利用方式は徐々に衣食から居住へと変化していく。エネルギーの消費数量は絶えず増加を続け、品質も徐々に高まる。 より一層の都市化が加速される。エネルギー需要は継続して増加し、中国のエネルギー資源、特に良質なエネルギー資源が不足し、 資源の需給矛盾と環境圧力が益々大きくなる。こうした問題を解決する根本的な方策はエネルギーの節約である。 早急に節約型社会を構築することは、当面の経済安定と比較的速い発展を維持するための差し迫った要求であり、 また全面的な小康社会を構築するという壮大な目標実現のためにも重要な保障である。
このため、中国のエネルギー問題を根本的に解決するには、経済の成長方式を変更し、新しい方式で工業化の道を歩まなければならず、 資源節約型、品質効率型、科学技術誘導型の発展方式を選択しなければならない。
産業、製品、技術及び企業組織の構造の見直しに力を入れ、技術、体制、及び管理の刷新を拠りどころとしながら、 全国で省エネに役立つ生産モデルと消費モデルを形成していくことで、省エネ型経済を発展させ、省エネ型社会を構築する。
節約型社会の構築は、中国が現代化を目指す全過程における長期的な任務である。期近での作業ポイントとしては、“省エネ中長期専門計画” の中で掲げる10大重点省エネプロジェクトの貫徹、省エネと石油代替燃料、コージェネレーション、余熱利用、省エネ建築、 省エネ照明等の重点省エネ工事の早期着工である。特に、鉄鋼、有色金属、電力、建材等の重点エネルギー多消費業界と企業の省エネを徹底する。 省エネ型の交通輸送手段及び農業機械の発展に力を入れ、都市公共交通システムの発展を優先し、高い燃費の自動車増加をコントロールする。 住宅の新築を推進し、公共建築の省エネ化と既存建築の省エネ改造を推進する。省エネ環境対応型の空調、冷蔵庫等家電製品を奨励し、公共施設、 ホテル・商業ビル、民間住宅及び社会全体で省エネ型照明製品の採用を奨励していく。公共建築の夏季空調室内温度の基準を厳格に実施する。 農村での家庭用メタンガスの利用工事を積極的に発展させる。また、水力発電、風力発電、太陽エネルギー、 バイオエネルギー等の再生可能エネルギーの開発と利用に積極的に努める。4.2エネルギー供給安全の保障
エネルギーの安全はエネルギーの安定供給を保証する前提条件である。エネルギーは国民経済発展の命脈であり、 エネルギーの安全は国家経済安全の重要な内容である。エネルギーの安全は実質的にエネルギーの供給安全を意味する。中国は大規模に石油、 天然ガス資源、延いては石炭の輸入を行おうとしている。如何にして中国のエネルギー供給安全を保証し、起こりうるリスクを回避していくかは、 我々が直面する重大な問題である。
中国のエネルギー安全問題は単にエネルギー需給量の矛盾だけでなく、クリーン・ エネルギーの需要硬直性が高まることによって供給不足が深刻化し、その結果引き起こされる構造的な矛盾である。 これは中国のエネルギー安全問題の中の主たる矛盾である。 石油の供給不足は中国国内のエネルギー安全上の主な矛盾の中でも主要部となるものである。国家のエネルギー安全を最大限に重視し、 自国にとって優位なエネルギーに立脚したものでなければならない。即ち、クリーンコールテクノロジーを開発、推奨し、水力発電、 原子力発電及び再生可能エネルギーの比重を大幅に高めていく。国際協力の拡大を急ぎ、エネルギー供給の多元化を成功裏に進める。 石油の安全保障という課題に対して中国は石油輸入への依存度を減らし、国際的石油市場の開発に積極的に参画し、 国際石油市場分野での協力を強化し、国家の石油安全を確保するためのフルセットの措置と対策を講じるべきである。
中国のエネルギー輸入の過程で起こりうるリスクを避けるために、採るべき主要な措置は以下の通りである。
(1)合理的なエネルギー消費へと誘導し、エネルギーの節約を励行し、石油代替エネルギーを開発利用し、供給圧力を減少させる。
エネルギー消費の合理的誘導を行い、中国の国情に適ったエネルギー消費の道を歩むものとし、 盲目的に先進国のエネルギー消費方式に追随してはならない。石油多消費型産業が中国の経済構造中に占める比率をできるだけ減らす。 クリーンコールテクノロジー、特にクリーンコール発電技術の発展に努力し、石油、天然ガスの不合理な利用拡大を防ぐ。
石油消費施設や設備のエネルギー効率を高め、積極的に石油を節約する。石油燃焼税を徴収し、 排気量の大きな自動車から特別賦課税を徴収する。石油代替製品、例えば天然ガス、アルコール、エタノール燃料、燃料電池等の研究、 開発及び利用を行い、石油焚きボイラーはコール・ウォーター・ミクスチャー(CWM)で代替可能である。相対的な経済性の基礎に立って、 こうした代替製品を積極的に推進、利用していくべきである。
(2)政治、経済、外交、軍事等の手段を総合的に駆使し、石油消費国と輸出国との対話と協力を強化する。
中国は外交戦略全体の中でエネルギー外交を今後の作業の重要な内容とするべきである。主要な石油産出国との政治、経済、 外交関係を継続して強化していく。選択的に国際エネルギー組織に参加し、東南アジア、東北アジア地区のエネルギー協力に参加する。 積極的に石油、天然ガスの国際貿易、金融、輸送等関連する経済組織活動に参加する。石油消費国と輸出国の多角的対話に参加し、 国際的なエネルギーの多角的協調メカニズムを利用する。利害を見極めながら、中国が国際石油資源に持つ権限を保護していく。
(3)石油産業の市場化改革を推進する。国内市場の対外開放の程度を拡大し、安全保障の程度を引き上げる。
世界貿易機関(WTO)加盟は、中国石油/天然ガス産業の市場化改革の推進に有利であり、 徐々に開放の程度と開発領域を拡大していくことは、エネルギーの安全保障上も有利である。一つには、メジャーの資金、技術、 管理経験を利用し、国内の石油埋蔵量と生産量を引き上げ、国内石油供給能力を増加させることが可能である。また一方で、 メジャーの中国国内での利益と引き換えに、中国が国外において、当該国との協力の可能性を増加できる。 中国の石油会社が海外に展開していく上で発生し得る阻害要因を減少させ、中国石油産業の“海外進出”政策と権益原油獲得に有利である。 この他、中国石油市場の開放に伴い、メジャーとの協力を模索する他、産油国との協力を行い、 中国石油市場と引き換えに海外からの石油供給を獲得していくことを検討すべきである。
(4)継続して“海外進出”戦略を実施する。権益原油の獲得ばかりでなく、石油市場からの石油/ ガス供給を確保するという主要ルートとしての機能を重視すべきである。
海外進出戦略の実施を堅持し、更に多くの海外の権益原油を獲得する努力を行う。 海外の権益原油の確保は中国が国外の石油資源を利用する一つの方法であるが、 世界の石油資源の大部分が既に他国の国際石油資本によって分配されている状況下、将来中国が海外の石油資源を利用する際の主要ルートは、 依然として国際石油市場からとなる。このため、国際石油市場での資本運用を強化し、買収、 株式参加等の多くの方法によって世界の石油市場に進出していく。積極的に石油市場の先物取引に参加し、極端な油価高騰を避ける。 中国のWTO加盟に伴い、輸入割当制度は完全に撤廃される。小売市場が全面的に対外開放され、先物取引の条件も日々成熟してきている。 燃料油の先物市場創設のほか、国内にできるだけ早く他の石油先物先物市場を創設すべきである。
(5)輸入多元化戦略の実施
多元化はエネルギーの安全を保障する最も主要な措置の一つである。その中には以下幾層かの意味を含んでいる。
1)輸入ソースの多元化。石油、天然ガス輸入のソースを分散化し、過度に中東地区の石油資源に依存するリスクを避ける。
2)エネルギーの種類の多元化。石油、天然ガスの輸入のほかに、石炭、ウラン資源の輸入も必要である。石油の種類では、 経済の合理性に基づき、原油の輸入以外にも製品油の輸入、延いては石化製品の輸入も必要である。また、LNGの輸入と同時に、 パイプラインによる天然ガスの輸入も必要である。
3)調達方式の多元化。貿易(スポット、先物)による方式、 権益原油による方式以外に産油国と合弁で石油精製会社を設立し海外の石油を確保する方法も可能である。
4)輸送ルートと輸送方式の多様化。船舶による輸送以外に、国境を越えた石油、天然ガス・パイプライン輸送も検討する必要がある。 船舶による輸送についても新たな輸送ルート開拓の実現性を急いで検討すべきである。(6)国家石油、ガス備蓄体制の歩みを加速し、石油/ガスの安全警戒メカニズムを構築する。
石油の戦略備蓄には国家が建設する戦略備蓄と企業備蓄がある。国家による戦略備蓄は国が直接投資と管理を行う。 企業備蓄は法律による体制を整え、優遇策を制定し、石油企業が通常の生産を行う以外に、新たに商業備蓄を建設、追加できるようにし、 戦略石油備蓄の補充とする。
一部の油田を戦略備蓄として捉える。地下に貯蔵する石油資源は貴重で確実な備蓄である。 一部の生産性の高い油田を備蓄の対象としてもよいし、現在採掘を行っている限界的な油田を備蓄の目標としてもよい。
天然ガスが安全に供給できるか否かは国民の日常生活に直接影響する。早急に天然ガスの戦略備蓄作業を重視すべきである。 中国の石油輸入依存度が30%以上に達してはじめて石油の戦略備蓄を検討するのでは“羊を逃がしてから檻の修繕を行う”ようなもので、今、 天然ガスの戦略備蓄に着手すれば、“事態を未然に防ぐ”ことができる。パイプラインは単線で、まだネットワークは形成されていない。 ガス貯蔵設備が不足しているこの状況下、天然ガスの供給安全の問題は更に突出している。このため、 パイプライン建設に大いに注力すると同時に、パイプライン・ネットワークの建設を重視すべきである。石油供給と異なり、天然ガスは年、季節、 週、日によって明らかな需要格差が存在する。格差対応が大いに必要とされることから、天然ガス貯蔵施設の一体建設等、 LNGのピーク調整能力を重視すべきである。
石油/ガス安全供給の警戒メカニズムを早急に創設する。石油と天然ガスの安全警戒体制の研究を強化し、警戒による効果、警戒レベルの区分、 異なる計画レベル別に対応措置を制定し、相応の法律、法規等を制定する。4.3エネルギー構造の改善
エネルギー構造の良質化は経済を発展させ、 国民の生活水準を向上させるための、また、社会、経済、環境がバランスある発展を遂げるための必然的な要求であり、 中国エネルギー戦略の発展の方向を示すものである。
エネルギーの高品質化戦略には二つの意味が包含される。一つは末端の最終エネルギー消費構造の良質化を絶えず促進していくこと。 末端最終エネルギー総消費量に占める良質なエネルギーの比率を絶えず高めていくことは、最終消費エネルギー使用効率を高め、 更には経済全体の競争力を高めることにつながる。国民の生活水準向上に最大限の満足を与える最も有効的な方法である。 最終エネルギー消費構造の良質化は、一次エネルギーの加工転換比率を絶えず高めること、特に石炭消費が発電に占める比率を高め、 転換効率を高め、各種クリーン・エネルギー技術を大いに発展させることによって実現していく。同時に、 最終消費者が徐々に天然ガス等の良質のエネルギーを以って石炭に代替していく。 二つ目は一次エネルギーの供給構造を絶えず改善することである。一次エネルギー供給総量中に占める石炭の比率を下げ、石油、天然ガス、水力、 原子力及び再生可能エネルギーの比率を引き上げる。一次エネルギーの供給構造改善は、 全国規模の環境コントロールという全体目標を比較的低いコストで実現するのに有効であり、 国民経済全体のエネルギー使用効率を迅速に向上させるのに有利である。 一次エネルギー構造の良質化は多種類の良質のエネルギーを同時に採用していくとの方針で実行し、絶えず、石油/ ガスの供給を増加させるとともに、水力、原子力、再生可能エネルギーも大いに発展させる必要がある。
エネルギー構造の良質化が従うべき基本原則は、国内と国外という2種類の資源と二つの市場を十分に利用し、 エネルギー供給が保障され経済的にも受入可能な条件下で、環境の品質と持続発展可能な能力を顕著に改善していくことである。
エネルギー構造良質化のステップは、沿海部から始めて全国へと徐々に推進していく。
エネルギー構造良質化の道のりは、早急に天然ガス開発と利用の奨励と促進に関する奨励政策を定め、中国天然ガス工業の発展を速め、 水力の発展を加速し、2020年以前のエネルギー供給構造良質化の過程でその効果を発揮させる。原子力の発展を急ぎ、 新エネルギーと再生可能エネルギーを積極的に発展させる。4.4環境配慮
中国の石炭資源の過度の採掘は既に深刻な生態環境の問題を引き起こしている。先ず、 石炭の採掘は中国にとって既に十分逼迫した状況にある土地資源を深刻に破壊している。中国の石炭は95%以上が坑内掘りである。 坑内掘りによって引き起こされる炭鉱の地表崩落は深刻である。統計によると、 中国の石炭採掘によって発生する地表崩落区域は既に暦年累計で40万ヘクタール(約4,000平方キロメートル)を超え、 毎年形成される土地崩落面積は1万2,000-2万ヘクタール(約120-200平方キロメートル)、内、耕地がその30%を占める。 次に石炭の採掘で深刻なのは地下水資源の破壊である。中国の石炭量産地域は往々にして貧水地区に位置する。全国の重点炭鉱区の内、 水不足の地域は71%を占め、内、深刻な水不足に悩む地域は40%を占める。炭鉱の安全生産を保証するために、 炭層上下部に位置する含水層に人工的な水捌けを促す処置を施す必要がある。炭層の頂上部に採掘の振動で裂け目ができると、 含水層に対して自然排水の作用を与える。これが炭鉱地域で地下水位が広い面積にわたって降下する原因となっており、 炭鉱及び周辺住民の生活用水を一層不便なものにしている。また、大量の地下水資源は夾炭層の層破壊により坑内へと浸透し、 こうした坑内水が大量の石炭粉、岩粉、他の汚染物質を含んで、大部分は浄化されずに排出され、周辺環境を汚染している。 一部は地下の含水層に浸透し、地下水資源を汚染する。更に、石炭採掘の過程で排出される廃ガスが深刻な大気汚染をもたらしている。 石炭採掘過程で発生する廃ガスとは、主として坑内ガスと地上ボタから自然放出されるガスを指す。統計によると、 中国では毎年炭鉱採掘の過程で排出されるメタンガスは90-120億立方メートル以上である。この他、 淮河以北の半旱魃地区ではボタ山の自然発火率が40%以上に達している。ボタ山からは、二酸化硫黄(SO2)、二酸化炭素(CO2)、 一酸化炭素(CO)等を含む大量の有毒ガスが排出され、大気環境を深刻に汚染し、周囲住民の健康を損なっている。
石炭利用の過程で生じる汚染は、中国の環境に甚だ深刻な挑戦をもたらしている。第一に、中国の石炭用途は直接燃焼を主とし、中国のCO2、 SO2排出量は高止まりしている。中国の年間CO2排出量は世界第2位で、SO2の排出量は世界第1位である。推算によると、 全国のSO2排出量のうち、石炭燃焼で生成する排出が90%を占める。SO2の排出は地域的な環境の酸化現象を招き、 酸性雨の面積は国土面積の30%以上を占め、生態環境に深刻な影響を与える。第二に、 石炭を主とするエネルギー構造は中国の都市環境汚染を一層深刻なものとしている。全世界の10大汚染都市の中で、中国が7席を占める。 4分の3近くの都市住民が、大気品質が目標に満たない環境の中で居住している。第三に、 石炭を主とするエネルギー構造がもたらす環境汚染と経済損失、汚染処理コストが高いことである。試算によると、 燃焼用石炭1トンのもたらす経済損失(森林と作物の被害、材料の腐食、住民呼吸器系疾患)は50-70元(約760-1,100円)で、 酸性雨がもたらす経済損失は1,500億元(約2兆3,000億円)を超える。
石炭がもたらす環境汚染は既に非常に深刻で、2005年のSO2排出量は2,549万トンに達し、2001年比31%増加、 前世紀末から続いていたSO2排出量減少の傾向が逆転している。“二つの制御区”(酸性雨とSO2の二つを制御していこうとする地域) での酸性雨制御状況も悪化傾向にある。酸性雨制御の観点に基づけばSO2排出の許容量は全国で1,620万トン、 大気品質に基づきSO2排出量を考えるのであれば、その許容総量は1,200万トン前後に制御されるべきであり、 そうしてようやく全国の大部分の都市がSO2濃度で国家の二級標準に到達する。過度な窒素酸化物(NOx) 排出という脅威も益々深刻になっており、その環境受容量も1,600万トンを超えることはない。
中国の大多数の都市が煤煙型汚染の悩みを抱える。各都市は石炭の最終末端利用を減らそうと努力しており、電力、天然ガス、液化石油ガス (LPG)等のクリーン・エネルギー比率を高めようとしている。 2003年のエネルギー総消費量とエネルギー構造に基づき簡単な試算を行った。脱硫を考えずに、エネルギー構成中に占める石炭の比率が1% 減ると、天然ガスの比率は1%上がる。それに伴ってSO2排出量も33万トン減少する。NOxは18万トン減り、煤煙は18万トン減る。 これらから、一次エネルギーの供給総量中に占める石炭の比重を下げることは石油、天然ガス、水力、原子力、再生可能エネルギーの比率を上げ、 僅かな代価で、全国環境制御目標を実現するのに有効で、持続可能な発展を実現することができる。
化石燃料の燃焼はCO2の主たる排出源である。国際エネルギー機関(IEA)及び『日本エネルギー経済統計ハンドブック2000年』 の試算によると、中国の2000年のCO2 排出量は約8億1,700万炭素トンで世界全体の13%前後を占め、 既に米国に次いで世界第2位の排出国である。但し、一人当たり平均では、中国は2000年でCO2排出量がわずか0.66炭素トン前後で、 世界平均水準の62.3%に過ぎない。
京都議定書が発効してからというもの、中国は最大の発展途上国として、排出量削減の巨大な国際圧力に直面している。目下、 中国のCO2排出量は既に世界第2位である。先と同様に簡単な試算を行うと、エネルギー構成中、石炭の比率が1%減ると、 天然ガスの比率は1%上昇、それによってCO2 排出量を400万トン以上削減することが可能である。石炭の比率を1%低下させ、 原子力の比率を1%引き上げると、CO2排出の削減量は1,000万トン以上に達する。 気候変動が中国の石炭中心のエネルギー構造に対してもたらす挑戦は回避する余地もない。 我々は将来負担する更に大きな代価と長期的視野にたった利益のために、一部の目の前の利益を放棄し、選択しなければならない。 今すぐ開始しなければならず、些かも躊躇することなくエネルギー構造の良質化を実施し将来の環境、 気候変化が我々にもたらす圧力を緩和しなければならない。
エネルギー環境はエネルギーの生産、加工転換及び末端最終利用にいたる全ての過程に関わっている。 環境要因はニつの面でエネルギー発展の方向に影響を及ぼす。一つは、 環境要因が末端最終エネルギー需要の発展と変化に極めて大きな影響を与えることである。都市化進展の過程で、 環境保護の観点から末端エネルギーに要求されるクリーン化は、エネルギー技術と一次エネルギー供給構造に重大な転換をもたらす。一方、 エネルギー生産、加工転換及び末端消費の過程で環境保護と社会問題(生命、健康、社会発展等)を解決していくことも要求している。 持続発展可能なエネルギー環境戦略は、石炭生産で引き起こされる水資源と土地資源の破壊問題について厳粛な挑戦を提示している。 石炭生産の安全性と炭鉱労働者の健康問題もエネルギー環境戦略が対峙しなければならない重大な問題の一つである。
中国のエネルギー環境問題を解決する指針となる思想は、国情から出発し、エネルギーと環境の調和の取れた発展を手がかりとし、 努力を怠らず全面的に中国エネルギーの持続発展可能な戦略を推進すること、クリーンで、高効率で、環境に有利なエネルギー体系を打ちたて、 エネルギー開発と利用の各方面で、生態と環境の改善に利する法規、技術、経済政策を制定し、完遂すること、 汚染管理施設と生態環境保護プロジェクトの建設を確実、且つ急いで行い、あらゆる手段を行使し、 エネルギー環境問題を効果的に解決していくことである。
中国のエネルギー環境問題を解決する全体目標は、化石燃料燃焼で生成されるSO2とNOx等汚染物質排出総量を低い水準に制御すること、 エネルギー生産がもたらす生態破壊と環境汚染問題を効果的に制御すること、GDP単位当たりの温室効果ガスの排出程度を顕著に下げ、 エネルギーによる環境汚染の管理技術を顕著に引き上げること、エネルギー環境の市場経済政策が基本的に形成され、 2020年までに全面的な小康社会が環境品質に対して有する基本的要求を満たすものであることである。
中国のエネルギー環境問題が準拠すべき基本原則は、エネルギー発展と環境保護という“二つの勝利”を堅持し、 エネルギー構造と消費様式の戦略的な調整を通じて、構造的な汚染問題を根本から解決すること、人と自然の調和を堅持し、 持続可能な消費と省エネを大いに提唱すること、クリーン生産と“三つの同時”([註]鉱山建設と鉱山環境保全施設を同時に設計、施工、 使用する)、エネルギーの活動がもたらす生態破壊と環境汚染を根源から削減し、生態建設と環境汚染管理を強化すること、遠くから近くへ、 外から内へと促すことを堅持し、“悔いのない”政策と措置実施を通じて、中国の気候変動軽減と適応能力の向上を図っていくことである。
中国のエネルギー環境発展の中に存在する主たる挑戦、及び環境目標が将来のエネルギー発展に提示する基本的要求について、 将来20年にわたり、“二つの制御区”の汚染制御、都市発展と農村の都市化過程でのエネルギー環境問題、石炭採掘と生態保護、 地球規模の気候変動と中国のエネルギー発展等四つの領域が中国のエネルギー環境戦略が重点を置くポイントである。 以下こうした領域でのエネルギー環境戦略を具体的に分析する。
エネルギー構造を改善し、エネルギー効率を高め、エネルギー消費単位当たりの大気汚染物質と温室効果ガスの排出強度を引き下げる。 中国の持続発展可能なエネルギー環境戦略は地球規模の気候変動問題がエネルギー発展に提示する様々な挑戦に応えるものでなければならない。 国際、国内二つの市場を十分に利用し、体制刷新を積極的に進め、エネルギー環境問題解決に有利で、エネルギー技術革新と省エネを促進し、 エネルギー効率を高める良性メカニズムを打ち立てる必要がある。国内汚染物質の排出権取引体系の設立を積極的に推進し、 国内のSO2排出権取引市場と国際CO2排出権取引市場の結合の可能性を追求し、 国内排出権取引を通じて大気汚染物質の排出削減コストを下げる努力を行い、中国経済、 社会及びエネルギー環境の発展に有利な形で国際CO2交易市場に参加する方法と時期を積極的に探求していく。
SO2と酸性雨制御区の深刻な汚染問題を徐々に緩和していく。酸性雨とSO2汚染問題を重点的に解決していくために統一的措置を講じ、 酸性雨とSO2汚染を防止する。先ず、できるだけ石炭の硫黄含有量を下げる。炭層の硫黄分が3%を超える炭鉱の新設を禁止する。 現在炭層の硫黄含有量が3%を超える炭鉱では減産と閉鎖を行う。電力用一般炭は洗炭加工を急ぐ。既存の洗炭工場について、時期を分け、 段階的に技術改造を行う。更に硫黄分、灰分の除去能力を高める。石炭利用を一個所に集中し、 輸送条件の良い場所に硫黄固定剤を添加する集中石炭配送所を建設し、商品としての石炭硫黄含有率を下げ、或いは硫黄固定化能力を高め、 石炭燃焼で排出するSO2 を減少させる。都市燃料の硫黄含有量を更に一歩進んで制限し“二つの制御区” の地方人民政府はSO2排出量削減に有利で、都市環境品質を改善する都市石炭燃焼と石油燃焼の硫黄含有量最高制限値を見直し、高硫黄石炭、 高硫黄石油の販売と使用を制限する。重点都市の人民政府は管轄する区域内での高汚染燃料の販売・使用禁止区域を策定し、 原炭と重油の販売と使用を制限し、積極的に天然ガス、LPG、電力或いは他のクリーン・エネルギーを使用する。 次に火力発電所のSO2排出量を制御する。“二つの制御区”の火力発電所のSO2排出量は既に“二つの制御区”のSO2排出総量の50% 近くを占める。経済発展と電力需要の増加に伴い、火力発電所の排出比率は継続して増大することから、火力発電所は“第15次” 計画期間中二つの制御区のSO2排出総量制御の重点分野となっている。高硫黄石炭地区、 排出基準を超え都市付近に位置する火力発電所には一連の脱硫プロジェクトを建設する。 第三に工業用ボイラー及び加熱炉からのSO2排出を規制する。エネルギー多消費、 汚染度の高い石炭焚きボイラーと各種工業用加熱炉を徐々に淘汰していく。都市市街区内においては小型の石炭焚きボイラーを淘汰していく。 それぞれの土地柄にあわせて、熱電を提供するコージェネレーションとセントラルヒーティングを発展させ、 分散している中小の石炭ボイラーを代替していく。都市部において積極的にガス焚き、地熱、電力ボイラーを改造建設する。 石炭ボイラーと加熱炉は優先的に良質の低硫黄石炭、洗炭後の石炭或いは硫黄固体処理後の石炭を使用し、 クリーンコールの燃焼技術を積極的に発展させる。
都市のエネルギー、交通と環境の関係を調和させ、農村のエネルギー環境問題に関心を払う。都市の発展はエネルギー、 交通そして環境との調和を重視し、クリーン・エネルギーによる市街区石炭燃焼による置き換えを強化し、絶えずエネルギー構造を改善していく。 省エネを促進し、エネルギー効率を高めてエネルギー環境技術を進歩させる優遇政策を制定する。 技術進歩を通じて生産技術と生活でのエネルギー使用方式を転換し、工業生産と住民生活におけるエネルギーの石炭依存度を低下させる。 都市経済構造の改善に努力し、持続発展を可能とする要求から出発し、都市経済に占める冶金、化学、 建材等エネルギー多消費型産業の比重をできるだけ下げる。都市の機能が求める高付加価値、低燃費、低汚染の産業を優先的に発展させる。 都市住民が購入する車両台数の急増が都市の交通と環境にもたらす圧力に対しては、 人口が密集する大都市区においては各種社会インフラを積極的に利用し、都市公共交通システムのネットワーク建設を行い、便利で、早く、 どこにも通じる、多様な公共交通システムを都市の主要輸送能力とすることで、都市交通輸送の要求に応える。 輸送効率の比較的悪い自家用車の都市部での通行量を減らし、交通渋滞を緩和、市外区での排気ガス排出量を少なくする。 厳格な排気ガス規制とエネルギー効率基準の実施を通じて自動車の技術進歩を促進し、 絶えず輸送能力単位当たりの汚染物質排出量の程度を低下させていく。自動車保有台数上昇の一方で汚染物質排出量の削減を行い、 自動車工業と都市交通輸送が良好な発展の軌道を走るように促進する。都市の環境インフラ建設を更に一歩強化し、ゴミ問題を徐々に解決、 汚水処理率を引き上げる。農村の都市化進展の中でエネルギー環境問題を大いに重視し、“小都市環境計画”の実施を貫徹する。 資金的な制限もあることから、農村インフラ建設は各種タイプのインフラ施設間の建設時間と能力等相互に調整をはかり、 大半の農村住民がすぐにでも必要とする電力、ガス等生活用エネルギー及び水道水の供給を優先し、 必要とされる環境保護施設を優先的に保証する。農村、小都市での汚水、ゴミの集中処理を行う。条件の整った地区において、太陽エネルギー・ 熱の利用、光電池とメタンガス等の再生可能エネルギー技術を積極的に推進する。環境保護宣伝教育を強化し、 郷鎮企業に対する審査手続きを厳格にし、エネルギー多消費、高い汚染度の遅れた生産技術を都市から淘汰し、 その後農村へと流れることを防止する。
生態保護を重視し、エネルギー工業の持続発展を促進する。中国の石炭は将来的に開発の重点が中西部で生態環境は相対的に脆弱なことから、 生態環境の状況を明確に調査した上で生態の基本的なバランスを維持し、徐々に回復可能という条件の下での石炭採掘規模を提案する。また、 石炭資源開発の生態環境評価を定量化した拘束指標を制定し、生態が許容する能力、規模、速度に厳格に基づいた開発と生産を計画し、 需要が直接生産を引っ張り、生態計画管理を疎かにした採掘方式を徹底的に改める。 炭鉱の開発と同時に生態回復建設と鉱区の生態環境保護を行い、閉鎖した炭鉱では積極的に鉱区と影響を受けた区域の生態回復作業を行う。 できるだけ早く関連法規と産業政策を完備し、確実に実行可能な監督管理規定を制定する。炭鉱での生産過程における資源管理の基本作業を強化、 法律に基づく資源浪費の行為を抑止し、資源回収率を向上させる。継続して鉱区環境保護の法律、 法規体系を完備しながら厳格な環境保護政策を実施し、鉱区の生産環境を改善する。【山中】
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16. 尚勇、蘇靖主編,《中国21世紀の持続発展可能な路》,中国経済出版社。
17. 賈文瑞、徐青等,《21世紀中国エネルギー、環境と石油工業の発展》,石油工業出版社,2002.6
