ダイアモンド・ガス・オペレーション株式会社


賢人達の視点

2007年04月18日
2007年のLNG業界-今後10年間の成長見通し(上)

 今週から3回に亘り、需給両サイドから見た2006年におけるLNG産業の動向及び今後の見通しを示した、 英国在住のLNGコンサルタントであるアンディ・フラワー氏による寄稿論文「2007年のLNG業界-今後10年間の成長見通し」 をお届けします。

序論
 本稿の副題「今後10年間の成長見通し」は、2006年に取引量が10.8%拡大し、過去25年間に亘り年平均7.7% の成長を遂げた業界に対する論題としては、特異に感じられるだろう。しかし、2006年に起こった出来事の幾つかは、 全てが必ずしも上手くいっているわけではなく、現在の成長水準を維持するためには、買主/売主/コントラクター/造船会社/船主/投資家/ 政府などの主要プレーヤーが、今後数年間に抱える課題に上手く対処しなければならないことを示す予兆であるかもしれない。

 LNGの需要は2006年に1億5,980万トンに達し、 総需要が初めて1億トンを突破した2000年に比べ5,700万トン増加した。遅くとも2009年までには2億トンを突破する可能性が高く、 これは最初の1億トン突破に36年を要したのに対し、次の1億トンが僅か9年で達成されようとしていることを意味する。 現在稼働中または建設中の液化プラントの2009年時点における生産量を考慮すると、大規模な混乱がなければ、 ほぼ間違いなく2億トンを達成すると我々は考える。2011年以降、現在建設中の液化能力の大半が操業しているであろうが、最終投資決定 (FID)がまだ下されていないプラントが世界のLNG生産量、ひいてはLNG事業全体に影響を与えるため、状況は一層不透明なものとなる。

 2006年に起こった出来事により、LNG業界の主な不確定要素の一つとして、どれほどのペースで新規液化能力の建設/ 操業開始が行われるか、という点が明らかとなった。2006年には、コストの上昇/パートナー間の意見相違/環境問題/ 政府決定の遅れがプロジェクトの遅延を招いたため、(液化部門においては)FIDが1件も下されなかった。一方、 LNGチェーンにおける輸送と再気化部門においては、このような問題や遅延は起こらなかった。

 2007年における大きな課題は、液化能力の拡大に勢いが戻るのか、それとも遅延が今後も続き、 供給量不足によりLNG船や受入基地の容量が十分に活用されないリスクが高まるのか、という点である。遅延が続いた場合は、 顧客のニーズに応えるために必要なLNGを確保できない買主が多数出るであろう。

 そうした事態は、日本に対して特に重大な影響を与える。同国は今もなお2位以下を大きく引き離す世界最大の輸入国であり、 他のLNG輸入国が国内ガス生産やパイプラインによる輸入など、LNG以外に(ガスを確保する)代替手段を持つのに対して、 同国にはそれがないからである。同国のLNG輸入量の増加率は近年緩やかであったが、2006年にはそれ以前の年と比較して加速が見られた。 しかし、2009-13年にかけて主要契約の多くが満了することから、もし需給バランスが今後も予想通り逼迫する場合には、 アジア太平洋地域の他の買主との間で新規契約を巡る熾烈な競争が起こり得る。

 中/長期的見通しについて考察する前に、まず2006年に起こった出来事とその将来への影響について見ておこう。

2006年のLNG輸入量
 <表1>は、 2006年の世界のLNG輸入量が全体で10.8%増加した一方、地域毎の実績にばらつきが見られたことを示している。 欧州は2年連続で最も急成長した地域であったものの、(前年比の)増加率は2005年の25.4%から15.1%に低下した。 スペインは依然として欧州最大の輸入国で全輸入量の40%強を占めるが、2006年は成長速度が落ちた。 例年に比べ降雨量が多かったため同国の貯水量が増え、水力による発電量が増加、ガス焚き発電 の需要が減少したからである。非発電部門では、 ガス価格の上昇がガスの使用にマイナス影響を与えた。
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 欧州第2位の市場規模を誇るフランスは、2006年に輸入量を13.7%増大させた。ベルギーの輸入量は2005年に3%減少したが、 2006年には50%増加した。英国もまた、欧州のLNG輸入量拡大に大きな貢献を果たした。 グレイン島LNG受入基地が初めて年間を通じて稼働した年であり、同施設の開発計画による第1フェーズ受入能力330万トン/年に近い、 260万トン/年を輸入した。同国のLNG輸入能力は、今後数年間で大きく増加する見込みである。Excelerate Energyがイングランド北東部ティーズポートに所有するティーズサイド・ガスポート・プロジェクトは、 2007年2月に最初のLNGカーゴを受け入れている。ウェールズ地方南西部ミルフォード・ヘイブンのドラゴン/South Hook両基地は、それぞれ2007年と08年に試運転を開始する予定である。グレイン島基地は現在拡張工事を行っており、 2010年までに同国の輸入能力の合計は4,000万トン/年を超えることになる。その結果、 同国はLNG取引でより大きな影響力を持つようになると考えられる。米国と同様に、価格/ 需要レベルに応じてカーゴの仕向地を変更する機会を、LNG事業者に提供する世界で最も柔軟なガス市場の一つを擁することになるからである。

 アジアは、2006年に2番目に急速な成長を遂げた地域市場であった。その輸入量は前年比11.0%増であり、2005年の4.8% 増と比較して大幅に加速した。日本のLNG輸入量は7.2%増で、 2003年に原発問題により電力会社がガス使用量を増大させて以来の最も高い成長率であった。2006年の成長の一因は、 長期LNG契約の多くにおける所謂Sカーブである。同国財務省の月次データによれば、2006年に輸入されたLNGの平均価格は約7ドル/ 百万Btuで、輸入原油の価格は11ドル/百万Btuに相当する平均64ドル/バーレルであった。

 韓国の輸入量は堅調で13.2%の成長を遂げたが、二つの期間に分かれた年であった。 前半6ヵ月の輸入量は2005年上半期と比較して30%近く増加したが、後半6ヵ月は3.5%減少した。この変転の要因の一つとしては、 第4四半期の天候が例年に比べ非常に温暖であったため、同国ガス消費量の約50% を占める国内部門と商業部門で暖房負荷が減少したことが挙げられる。加えて、最近の原油価格の下落が、 2006年下半期に発電部門における石油焚きへの燃料転換を促した。アジアで3番目に確立された市場である台湾の輸入量は8.6%増で、 現在も長期契約に基づくLNG量をかなり上回るレベルで推移している。同国はスポット購入量を増加させており、 2006年におけるスポット購入量は28カーゴ分(ほぼ170万トン)であった。この傾向は今後も継続すると見込まれる。

 アジアにおける二つの新規市場であるインドと中国は、域内の需要において重要な役目を果たし始めている。 インドは2004年に初めてLNGカーゴを受け入れて以来、既に世界第6位の規模を誇る輸入国に成長し、 2006年の輸入量は620万トンであった。この量は、同国の主要買主であるペトロネットLNG(PLL)がカタール・ ラスラファンLNGⅡ(ラスガスⅡ)プロジェクトとの間で長期契約を締結している500万トン/年を、120万トン(約20カーゴ相当) 上回る。同国はラスガスⅡとの契約上、2009年までの当初5年間は低い固定価格を享受しており、 その後は石油価格と完全に連動した価格となる。しかし、天然ガス需要の高まりに応えるため、 インドのLNG買主はスポット市場を利用した国際価格で購入し、消費者が必要とする追加カーゴを確保せざるを得なかった。一方、中国は、 2006年5月に広東基地にて最初のLNGカーゴを受け入れ、世界で16番目のLNG輸入国となった。その輸入量は、 同年第4四半期までに毎月3カーゴを受け入れる程になるなど、急速に拡大している。これは全て豪州からの輸入である。 中国の2006年の輸入量は合計70万トンで、2007年には更に増加すると思われる。

 アジアのLNG買主は、需要増加への対応策として、大西洋地域の生産者に頼らざるを得なかった。というのも、 太平洋地域の2大供給国であるインドネシアとマレーシアの生産量が2006年に減少し、 中東の生産者がその不足分を完全には賄えなかったからである。アジアにおける追加需要の3分の1に相当する350万トンのLNG、 つまり計61カーゴが、エジプト/ナイジェリア/トリニダード・トバゴ/アルジェリアからアジア市場に輸出された。 <グラフ1>が示すように、カーゴの流れは年間を通して継続的にあり、そのピークは大西洋地域から10カーゴ(57万トン) がアジア市場に輸出された12月であった。年間の内訳は、エジプトから計36カーゴ、トリニダード・トバゴとアルジェリアから各10カーゴ、 ナイジェリアから5カーゴである。2006年にはエジプトの生産量の20%近くがアジアに輸出されたことになり、 同国の液化プラントが欧米への供給を視野に建設されていた当時、この結果を予測した者は殆どいなかったと思われる。
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 大西洋地域の生産者からアジアへ輸出されたカーゴの多くは、米国の基地へ輸送されるはずだったもので、これは米国の輸入量が7.6% 減少した主たる要因である。米国の輸入量は2年連続で減少している。2006年の輸入量は、 ピークであった2004年の輸入量を140万トン(約24カーゴ)下回った。8月にアルタミラ基地で初のカーゴを受け入れたメキシコも、 米国の輸入量減少に寄与した可能性がある。というのも、メキシコが2006年に荷揚げした10カーゴは、 恐らく米国市場向けの代替であったと思われるからである。2007年に注視すべき動向の一つは、米国の輸入量がどの程度持ち直すかであろう。 先物市場の価格から、2007年の大半においてヘンリー・ハブ価格が欧州価格を上回ることが予測できる。当初の推測では、 2007年第1四半期の米国の輸入量は前年と比較して10-12カーゴ程度増えるとされている。

2006年のLNG供給量
 供給側を見ると、2006年にはカタールが、 それまで20年間に亘りその地位を維持してきたインドネシアを抜き世界最大のLNG生産国となった。カタールの生産量は、 1997年に初カーゴを日本に受け渡して以来急速に増加してきた。<グラフ2>が示すように、アルジェリア/インドネシア/ マレーシアといった他の主要生産国における過去10年間の生産量の推移は、カタールのデータと比べてかなり「平ら」である。2006年には、 これら3国の生産量が減少したのに対してカタールの生産量は17.5%と急増した。カタールが、 近い将来その世界最大の生産国としての地位を譲ることはないと思われ、今後5年間に操業開始が予定される供給能力4,680万トン/ 年を合わせると、同国とその主要競合国との差は開くばかりである。
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 LNG生産量を大幅に増大させた国々は他に、豪州(2005年比21.4%増)、オマーン(同21.2%増)、エジプト(同95.4%増) 、トリニダード・トバゴ(同23.3%増)、ナイジェリア(同43.3%増)であった。これらの国々はいずれも、 2004年から06年にかけて新規トレインの試運転を開始している。 増強中に問題を抱えることになったものやガス供給量の不足により生産量が制約されたものも含め、 これら新規トレインが最大能力で稼働するようになるにつれ、2007年もLNG生産量は継続的に増加するはずである。【川上】

 

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