- 2007年04月25日
- 2007年のLNG業界-今後10年間の成長見通し(中)
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今週も先週に引き続き、需給両サイドから見た2006年におけるLNG産業の動向及び今後の見通しを示した、 英国在住のLNGコンサルタントであるアンディ・フラワー氏による寄稿論文「2007年のLNG業界-今後10年間の成長見通し」 をお届けします。
2006年にLNG市場の成長を抑制した主要因
最も古く且つ最大のLNG輸入国である日本/ スペイン/米国の3国で受入能力が継続拡大したのに加え、メキシコのアルタミラ基地及び中国の広東基地が稼働を開始し、 輸入国が新たに出現したことから、2006年の(世界的な)LNG受入能力は引き続き拡大した。LNGチェーンの一角を成す輸送分野もまた急速な拡大を続けている。2006年には記録的とも言える28隻が就航し、 世界全体の積載容量を17.3%増大させた。その結果、 使用可能となった予備の船舶を用いての大西洋地域からアジアへ向けた取引が可能となった。また傭船レートが低迷したため、 このような取引で2ヵ月も船舶を使用したところで法外に高額という訳ではなくなった。加えて、使われていない船舶を「洋上の貯蔵施設」 として使用し、寒冷期到来による天然ガス価格の上昇を見越して夏から初秋にかけてカーゴを荷積みした企業もあった。 2006年11月にLNG船16隻がこうした利用に充てられ、2007年1月にはその全カーゴが荷揚げされている。
2006年の受渡しにより同年末の国際船舶数は218隻となり、さらに142隻が2007年-10年の納品を視野に発注されている。 これには、カタールプロジェクト用の積載容量20万立方メートルを超える船舶45隻が含まれる。全体として、 発注されている船舶の平均的な積載容量は就航中のものに比べて著しく大きく、 全てが就航した時点でLNG輸送容量は現状の2倍近くまで引き上げられる。従って、中期的に見ても輸送が活動の制約になるとは考えにくい。
2006年の主な制約は、LNGの生産であった。2005年1月から2006年12月にかけて生産能力4,230万トン/ 年が試運転を開始したこともあり(<表2>を参照)、2006年のLNG生産量は実績値である前年比10.8% 増を大幅に上回るはずであった。新たに操業を開始したトレインの中に生産量の拡大が予想よりも遅いものがあったこと、 及び旧来のプラントの中に技術的問題が発生したものがあったこともあり、生産量が減少したのである。(生産国が) ガス生産を国内消費用に振り向けたこと、上流部門のインフラ開発の遅延、ガス田の枯渇といった要因が重なったことにより、多数の新規/ 既存施設でガス供給量の問題が発生したことも、総生産量にマイナスの影響を与えた。
<グラフ3>は、2000-06年におけるLNG生産量(実績)と液化能力との差異を示している。各年の液化能力は、年初/ 年末時点での液化能力を平均して概算したもので、差異は、利用可能な液化能力から実際の生産量を減じて算出したものである。 <グラフ3>の棒グラフは、これらの値を当該年に利用可能であった(が利用されなかった)平均的な液化能力の割合として示したものである。 2001年と02年でこの値は、約9%と比較的大きかった。これは、主な市場で需要が低迷していたことと、 LNGをそれに代わる市場へと転送するための輸送能力が不足していたことによるところが大きい。2003年には、 米国の基地再開が余剰LNGカーゴの受入先を創出し、また新たに就航した船舶が増加した供給量を運搬するに足る輸送能力を提供できたため、 差異は4.4%に減少した。しかし、液化能力と供給量実績の差異は2003年以降徐々に増大し、2006年には利用可能能力の12% 近くに達した。船舶が利用されず、米国の受入基地がその能力の3分の1未満で稼働している状況であることから、 今起こっている問題がLNGの生産によるものであることは間違いない。
液化プラントが従来のようにうまく機能していない原因は、一つではないかも知れない。 LNG事業が記録的速度で発展を遂げる一方で、経験や専門性はより希薄な形で拡大してしまっており、その「ひずみ」 が顕在化していても驚きには値しない。また、 1990年代後半から2000年代初頭にかけてのコスト削減が一歩先に行き過ぎ、 今日そのツケを支払っているということも言える。そして、投資者がスケールメリットを目指すあまり、 LNGのトレイン容量がますます大規模化し、新規液化トレインの生産量を設計能力ぎりぎりまで引き上げ、 それを維持したことでこうした問題が生じている可能性もある。今後数年間の液化トレインのパフォーマンスは、 LNGビジネスがどの程度の速さで拡大するか、そして既存/新規の買主のニーズがどの程度満たされるかを決定する重要な要素となろう。2006年には新規液化能力へのコミットメントなし
2006年にFIDが一切下されなかったことにより、 買主のニーズを満たせるような速度で新規液化能力を開発していくのは困難なことが一層鮮明になった。年初には、 2005年にコミットされた5,150万トン/年に匹敵する程の新規能力へのコミットメントが(2006年にも)行われ得るかに見えた。 ペルーLNG、アンゴラLNG、ナイジェリアのOlokola(OK)LNGとブラスLNG、豪州のゴーゴンLNG、 イランのパルスLNGなどのプロジェクトはいずれも、2006年内にFIDを下すとしていたし、 2004年1月に爆発と火災により破壊されたアルジェリア・ スキクダの液化プラントの能力に取って代わる新規液化トレインも着工される予定だったからである。これら全てのプロジェクトが、2006年内のFIDに漕ぎ着けるほど進捗するとは言わないまでも、 全てが2007年以降にずれ込み2006年には新規液化能力へのコミットメントが一切行われないなど予測した観測筋は殆どいなかったと思われる。 各プロジェクトにはそれぞれの遅延理由があったが、共通の主題は建設コストの急激な上昇だった。それにより、 コスト削減の機会を見極めるためスポンサーがプロジェクト開発を一時保留したのである。プロジェクト遅延の要因には他に、 パートナー間の意見相違、環境問題、地政学的状況などがあった。
液化コストを比較するには、年間能力について1トン当たりのコストを算出する方法が一般的に用いられる。地域的条件、建設地、能力、 そしてプロジェクトの開発を行うのがグリーンフィールドであるかブラウンフィールドであるかによって実際のコストは上下するため、 この数値は相対的なコスト目安を示すに過ぎない。<グラフ4>は、初めて商業用輸出向けプラントが建設された1960年代後半以降の、 液化プラントコストの推移を示している。1970-85年の下降期の後、80年代後半にはコストは年間600ドル(約7万2,000円)/ トン近くまで上昇したが、その後の集中的なコスト削減努力の結果、2000-05年に稼働開始したプラントの中には、年間200ドル (約2万4,000円)/トン以下までコストを下げたものもあった。ここ数年は、原材料費や注文の殺到、機器費用の高騰が大きく影響し、 コストは再び上昇している。米ベクテルのAmos Avidan第一副社長は2006年10月にローマで開催されたCWC LNGサミットで講演し、新たな液化能力のコストについて年間300-600ドル(約3万6,000-7万2,000円)/ トンの範囲と概算した。これを<グラフ4>の一番右の棒に示す。しかし、最近の報道では、 新規プロジェクトの中には年間能力に対するコストが800ドル(約9万6,000円)/トン、或いは1,000ドル(約12万円)/ トンにさえ迫るものがあり得ると示唆している。このような水準では、投資家は液化コストを賄うだけで3-3.5ドル(約360-420円)/ 百万Btuを20年間に亘り支払い続けることなり、これにガス生産や輸送、再ガス化のコストを上乗せしなければならない。 FIDを遅らせて徹底的なコスト見直しを行おうとするプロジェクトがあるのも不思議はない。
ペルーLNGは2007年1月22日、首都リマの南方169キロメートルに位置するPampa Melchoritaに生産能力400万トン/年のプラントを建設する契約を発注したと発表したが、 これは2005年12月のカタールガス3/4プロジェクト以降、新規液化能力への最初のフルコミットメントであった。 再ガス化基地のプロモーターや、2010年以降の天然ガス需要増大に対応するため更なるLNGを求めている買主は、 ペルーLNGのこの決定が停滞を打破し2007年に行われる多数の新規コミットメントの先陣を切るものとなるのか、 それとも各プロジェクトの遅れを継続させるものなのか、見守っていくであろう。出資者らの発表によると2007年には計8,000万トン/ 年についてのFIDが下される可能性があるとはいうものの、実際にはほぼ間違いなくそれより少ないものとなるだろう。新規液化能力へのコミットメントが遅延した影響は、2010年以降にならないと完全には実感されないであろう。<グラフ5>は、 2015年までの世界的な液化能力の稼働状況について、2006年1月時点での私の予測を、2006年のFID遅延を考慮に入れた最新 (2007年1月時点)の予測と比較したものであり、(最新の予測では)2012年における液化能力を4,700万トン/ 年下方修正している。プロジェクトの大多数はキャンセルではなく遅延されるものと見込んだため、 2006年と07年時点の予測値の開きは2013-15年に収束する。
次なるカタールはどこか
<表3>は液化能力に関するデータをまとめたもので、見通しは明るいようだ。 2007年2月に世界で稼働していた液化能力は1億8,850万トン/年で、加えて9,220万トン/年が建設中、 2011年までにはこれらの全てが操業を行っているはずである。その時点で、インドネシア・ アルンの液化プラントが恐らく閉鎖されていることを加味すると、液化能力はほぼ2億8,000万トン/年となる。更に、 2億5,000万トン/年の能力が現在のところ計画段階にあるため、2020年より前の時点で液化能力は5億トン/ 年を超過する可能性がある。
しかし、計画中の液化能力のうちどの程度がどれだけの速さで建設されるか、という重要な問題がある。 今後5年間における液化能力の急速な拡大は、カタールにおける新規液化トレイン建設によるところが大きい。既に着工された液化能力のうち、 カタールで建設中の巨大液化トレイン6基(総生産能力4,680万トン/年)が半分を占めている。残りの50%は、インドネシア/ロシア (サハリン)/豪州/マレーシア(デュア:MLNGⅡのデボトルネッキング)/ペルー/ナイジェリア/ノルウェー/ 赤道ギニアの8ヵ国に広がっている。カタールがここまで急速に液化能力を増大させることができたのは、様々な優位性を保持していたからである。その優位性とは、 900兆立方フィート(LNG換算約8億5,000万トン×20年)とされる甚大なガス埋蔵量、 十分に開発され且つ拡張の余地を備えたラスラファンの敷地と港、新規液化トレインの開発を全面的に支持してきた政府があったことである。 そして、各巨大トレインについてFIDが下された際、関係したパートナーがそれぞれ僅か2社であったことも優位に働いた。 カタール液化ガスⅡ(カタールガスⅡ)とラスラファンLNG3(ラスガス3)はカタール国営石油会社(QP)/米エクソンモービル、 カタールガス3はQP/米コノコフィリップス、カタールガス4はQP/蘭シェルである。新規LNGプロジェクトの進展において、 パートナーが少数であることの優位性は過小評価されるべきではない。
2005年4月、カタールは巨大なノースフィールド・ガス田について、ハイレベルでの生産パフォーマンスを調査するため、 開発を一時停止すると発表した。最近の動向からすれば、調査結果の発表は早くても2009年になってしまうであろう。 LNGなどのガス関連産業で急速な開発を続けるのであれば、 カタールは2012年以降のLNG生産量拡大に引き続き大きく貢献していくであろうが、同国が更なる開発を認める決定を下すにしろ、 ペースは過去数年と比較してより慎重なものとなるであろう。
買主らが望む著しい需要の伸びを支えるための、新たなLNGはいったいどこから来るのだろうか。新規液化能力の3分の2以上は、 豪州/ナイジェリア/ロシア/イランといった僅か4ヵ国で計画されている。いずれの国も、 2011年以降の世界においてLNG生産での貢献を果たすという点で、第2のカタールとなるだけの十分なガス埋蔵量と野望を有している。 ここで大きな疑問となるのは、今後LNGの生産が行われる地域とプロジェクトが多岐に亘り、また数々の異なる企業が関与する中で、 上記4ヵ国の中に生産量を急増させることのできる国があるのかという点である。 もしもこれらの潜在的な輸出国が買主のニーズに応えることができなければ、 過去2年間に亘り展開してきた売手市場が2010年以降も暫く続くことになるだろう。【川上】
